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2020.05.05

温泉旅館の設計 『温泉分析書の記載事項を知る』 箱根温泉 とpH

温泉分析書の中で泉質と同じく重要な意味をもつ「pH値(ピーエッチ)」入浴時の感触や肌触りにも関係する「pH値」を箱根温泉の特徴とともにご紹介します。
箱根温泉の歴史から

箱根温泉は約1200年前の奈良時代 の湯本温泉に始まり、鎌倉時代に芦之湯温泉、江戸時代には 湯本・塔之沢・堂ケ島・宮ノ下・底倉・木賀・芦之湯のいわゆる「箱根七湯」の温泉場が開けました。明治以後、新たな温泉の開発も進み、新たに大平台、 小涌谷、二ノ平、強羅、宮城野、仙石原、姥子、湯ノ花沢、芦ノ湖、蛸川の9つの温泉を合わせて 「箱根十七湯」と称しています。さらに早雲山、大涌谷、湖尻の3か所を加えて「箱根二十湯」と呼ばれています。現在では、「都心に一番身近な温泉郷」として宿泊利用者数が全国でトップの温泉リゾートになっています。

泉質分布帯

箱根温泉は上記20温泉を中心に複雑に入り組んだ地形や地質から様々な種類の温泉が湧きだしています。泉質、温度、pH値と同地区でも多少異なります。

箱根二十湯と各温泉場の源泉数。源泉数は小田原保健福祉事務所による2012年3月末のデータ◇出典:神奈川県温泉地学研究所 II-3-(1)箱根温泉

潜在カルデラ

箱根山は40万年前に活動を開始した火山であり、地表に古期外輪山、新期外輪山、中央火口丘があります。また、かつて湖の時代があったと考えられ、地下にカルデラ構造があると考えられている。箱根には 現在 350 以上の源泉があるが、温泉がどこにでも あるわけではなく、その分布には特徴があり、湯本地区を 除くと4つの潜在カルデラ内に偏在している考えられています。

温泉の分布と潜在カルデラ構造。●赤丸が源泉の位置を示す ◇出典:神奈川県温泉地学研究所 II-3-(1)箱根温泉

①箱根湯本地区の温泉エリア

湯本、塔ノ沢など 【主な泉質】単純温泉、食塩型や石膏を含む食塩型の温泉など。pH8~9

□箱根水明荘:泉質 アルカリ性単純温泉 知覚的試験 無色透明無臭 pH 8.3

②箱根中央地区の温泉エリア

強羅、二ノ平など【主な泉質】食塩型の温泉、単純温泉や芒硝を含む食塩型の温泉など。pH8~9 酸性-カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉(旧泉質名 酸性-含塩化土類石膏泉)pH2.5

③箱根山岳地区の温泉エリア

芦ノ湯や元箱根など【主な泉質】重炭酸土類を含む芒硝型の温泉など。pH6~8

□松坂屋本店:泉質 含硫黄-カルシウム・ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩泉(硫化水素型)源泉は独自の源泉で、自噴250L/分 源泉の温度62.5度、緑色の湯が、時間とともに酸化して白濁する。全国でも珍しいアルカリ泉の硫黄泉。 pH7.3

④噴気地帯の温泉エリア 

大涌谷や早雲山【主な泉質】pH2~3の石膏を含む芒硝型の温泉、pH6の硫黄を含む単純温泉

□金乃竹仙石原:酸性-カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉(旧泉質名 酸性-含塩化土類石膏泉)蒸気井温泉 pH2.1

大涌谷

箱根火山の最高峰神山の北側は、およそ3000 年前に箱根火山最後となる水蒸気爆発をおこし崩壊を起こしました。大崩壊は新しい溶岩が地下から上がってきたことによって起き、崩壊地の中にある噴気地帯が大涌谷です。今も100℃前後の硫気と水蒸気を噴出しています。大涌谷の噴気は、硫化水素を含み周囲はその臭いに包まれています。火山性ガスや酸性の土壌に耐えられる植物だけが生育できる環境です。適応できない植物は枯れてしまうため、岩石は粘土化して赤茶けた山肌が見えています。
温泉利用は明治時代からで、本格的には箱根温泉供給(株)による供給事業が開始された1933年(昭和8年)からのことです。温泉を利用した1個食べると7年寿命が延びるといわれている「黒たまご」が名物です。地熱と火山ガスの化学反応を利用した「黒たまご」は、生卵を温泉池でゆでると、気孔の多い殻に鉄分が付着します。これに硫化水素が反応して硫化鉄(黒色)となり、黒い殻のゆで玉子ができあがります。

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知っておきたい 温泉分析書に表示されている pH(ピーエッチ)

温泉の分類の仕方には、「泉質」「浸透圧」「泉温」など様々な方法があり、その中の一つが「pH」による「液性」の分類です。pH は水溶液の性質を表す単位であり、水素イオン濃度の量を意味します。0 ~ 14 の目盛りをつけ、酸・アルカリの度合いを数字で表します。 pH7 を中性とし、それ未満を酸性、それより大きければアルカリ性を意味します。 pH7 よりも値が小さければ小さいほど酸性の性質が強く、値が大きければ大きいほどアルカリ性の性質が強いことになります。

温泉は湧出時のpH値により次の5つのカテゴリに分けられます。

pH2~3未満:酸性
pH3~6未満:弱酸性
pH6~7.5:中性
pH7.5~8.5未満:弱アルカリ性
pH8.5以上:アルカリ性

pH値の違いが、温泉の泉質にどう表れるのかをご紹介いたします。
【アルカリ性】

アルカリ性:pH8.5以上  弱アルカリ性:pH7.5以上8.5未満

〔例〕石鹸:pH7~10、海水:pH8~8.5、ミネラルウォーター:pH7~10

アルカリ性のお湯は肌触りがヌルヌルした感覚で、口にすると苦い感じがあります。主に「乳化作用」という肌の角質を取ったり肌の表面を溶かす作用があるため、弱くはありますが、ピーリングをしていると考えてもよいでしょう。自分の皮脂で石鹸ができる状態に近いため、入浴後も肌がつるつるスベスベです。一般的に、「美肌の湯」と呼ばれる温泉は、弱アルカリ性の温泉が多いのも、この恒常性機能の働きによるといわれています。強アルカリ性の温泉は長湯をすると肌の脂分が取られ過ぎてしまうため、5分〜10分程度の入浴が適切とされています。

【中性】

中性:pH6以上7.5未満

〔例〕水道水:pH5.8~8.6、牛乳:pH7、汗:pH7~8

日本の温泉の中で最も多いのが、中性~弱アルカリ性の温泉です。肌への刺激が少なく、肌が弱い人や敏感肌の人でも安心して入浴することができます。肌のpH値に近く、刺激の少ない、肌にやさしい温泉です。

【酸性】

弱酸性:pH3以上6未満  酸性:pH2以上3未満

〔例〕レモン:pH2~3、スポーツドリンク:pH3~4、ビール:pH4~5

酸性のお湯は少しピリピリするような肌触りが特徴。肌の表面にある古い角質を柔らかくして溶かしてくれます。また、高い殺菌効果があり、皮膚の疾患、切り傷などによいとされています。体の新陳代謝も促してくれるので、昔から慢性的な皮膚病などの治療にも使われてきました。入浴後は肌がツルツルになりますが、肌の弱い人には効きすぎる場合もあるので、入浴後に真湯でしっかり洗い流しましょう。

まとめ

箱根の温泉は、pHの幅も酸性から中性・弱アルカリ性まで幅広く存在する温泉地です。お湯の色や香りも、それぞれに違うので、自分好みの温泉を見つけてください。また、『温泉分析書』は、温泉のプロフィールのようなものです。温泉分析書が見方が分かると、温泉の楽しみが増えます。さらに目的や体質に合った温泉を選べることで、旅の楽しみも増えることでしょう。

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